Skip to content

awata_tgr

楽しいことしかやりたくない。それで、目の前の人を笑顔にしたい。

1 min read

楽しいことしかやりたくない。それで、目の前の人を笑顔にしたい。

人事・採用の仕事に携わり始めて、もうすぐ10年です。

会社活動に必要なものは「ヒト・モノ・カネ」と言われています。中でも、ヒトという要素はとても重要。人事とは、そのために採用や評価を担うポジションです。

でも、たとえば採用は、事業目標を達成するための「手段のひとつ」にしか過ぎません。

だから僕は、自分の仕事を「人に関する課題を解決すること」と定義しています。

狭義の人事業務にとどまらず、人に関してさまざまなアプローチを行い、組織に価値を与えていきたいと思っているからです。

とはいえ、僕も昔は「人事=採用」だと勘違いしていました。まずは、そんなこれまでのキャリアを振り返ってみます。

■採用の仕事との出会い

ちょっとした採用業務には、働き始めたすぐのころから携わっていました。オーストラリアの大学院を卒業して、現地のベンチャーに就職したときには、自分のチームの採用。その会社を辞めて起業したときには、自社採用。とくに戦略は持っていなかったけれど、必要に応じて自分で人を探し、採用してきました。

その後、日本に帰国して、ハイクラス人材向けの転職エージェント会社に就職。どうやら採用が面白いと本格的に感じたのは、このタイミングです。「採用には量が大事だけれど、何も考えずに量をやっても意味がない」ということも学びました。会社と人をしっかりマッチングさせなければ、何も生まれないのです。

その会社では「エージェントは一生の仕事だ」と言われていて、僕も確かにその面白さを感じました。でも、エージェントのビジネスモデルは「転職者の年収×成約数×自分のフィー」。一人で成約できる数には限りがあるため、自分の報酬をアップさせるには、関わる人の年収を上げていくしかありません。

仕事自体は面白いけれど、付き合う人を「年収」という軸で選んでいかなければならないのが、自分には合っていないと感じました。僕は年収関係なく、頑張っている人を応援したいと思ったのです。また、専門知識や技術をもった人の採用に興味があったため、ハイクラス人材よりもエンジニア系のサポートに力を入れたいと考えるようになりました。

■初めて「事業会社の人事」というラベルを背負う

そこで挑戦したのが、AIベンチャーでのエンジニア採用です。その会社で、僕に初めて「事業会社の人事」というラベルがつきました。本格的な実績はなかったけれど、必要なことをちゃんと考えてひとつずつ実行していけば大丈夫。きっとできるだろう、という自信がありました。

では、具体的にどんなことを考えていたか?

繰り返しますが「採用」とは「手段」です。

やりたいことがあるけれど、社内にその実現能力がないとき、会社は異動・教育、プロの採用、業務委託といったさまざまな手段を考えます。いろいろと検討した結果、やりたいことをやらないという選択もあるでしょう。

そこで「いい人を採用する」という結論が出たとき、ようやく採用に乗り出します。

どんな人が必要なのか? その人はどこにいるのか? その人が当社に来る意味は? 費用はいくらまで払える? といった「問い」を洗い出し、答えを探していくのです。

自分がその答えを持っていないときは、社内で答えを持っている人に尋ねます。たとえば、「エンジニアにとっての当社の魅力」を知るには、社内のエンジニアに聞くのが一番早い。すべてを自分でやろうとせず、周りを頼りながらプロセスをつぶしていくのがポイントです。熱く頑張ることは大切だけど、頑張るだけでは成果が出ないから、冷静に頭を切り替えながら動きます。

そんな戦略と実践の末に、AIベンチャーのエンジニア採用では、一定の成果を出すことができました。「どんなレイヤーのどんな職種の人でも、やり方をカスタマイズしていけばたぶん採用できる」という自負も生まれました。

もともと僕は、技術で社会に貢献するエンジニアという存在が好きなんですよね。だから、自分が好きだと感じる人を採用していくのは、難しいけれど楽しかったです。

■「組織を良くすること」にも興味を持ち始める

採用がある程度できるようになると、新しい興味がわいてきました。次は、人を集めるだけでなく、人がいる組織を良くしていきたい。チーム作りに貢献したいと考えるようになったのです。このころにはもう、人事の仕事は採用だけではないと気づいていました。

そこで、AIベンチャーで社内合宿を提案。初期メンバーと途中から入社したメンバーとで、会社のビジョンやカルチャーの理解度が大きく異なっていたため、このあたりで改めてインプットし直したほうがいいと考えたからです。これから全員が一枚岩となって進んでいくために、必要なイベントでした。

合宿では、新旧メンバーの親睦を深めることには成功。でも個人的には、肝心の「会社についてのインプット」が、あまりうまくいかなかったように思いました。合宿の意義をしっかりと周囲に伝え、コンテンツを熟考して臨めば、結果は違ったかもしれません。自分がもっとオーナーシップを持てばよかったと、後悔もしました。

だから、今度はいっそうチーム作りに邁進したい。採用でバリューを出しつつも、採用以外の人事領域まで心底楽しんでやれる会社がいいと考えて、この4月に現職のRepro株式会社へ移りました。もうすっかり、リモートで仕事を始めています。

■やっていることは、実はずっと変わらない

ざっくり分けると、20代のキャリアはおもにマーケティングで、30代からが人事。

でも、僕が目指していたのはずっと「技術者が出すバリューをさらに高めること」「人を笑顔にすること」でした。マーケティングと人事で方法は違っていても、目的は同じだったのです。やっていることの本質は、実はずっと変わりません。

ただ、マーケティングは、良いプロダクトを届けることで、届けた相手を笑顔にする仕事。それもすばらしいんだけど、僕はどうも視野が狭いから、相手が遠いと本当に役立っているのかピンときません。

でも、人事なら相手は目の前にいるし、社内のメンバーもだいたいちゃんと顔が見えます。そんな周りの人が笑顔になってくれるだけで、全然いい。もしかしたら、面白いトークでくすっと笑かすだけでもいいのかもしれません。だけど、それじゃものすごく短期回収だから。ちゃんと長期的な未来から考えて、本当にみんなを幸せにする仕事がしたいって思っています。

だからこそ、心から笑顔になってほしいと思える人たち、リスペクトしあえる仲間と、一緒に仕事がしたいです。どんな人と働くかが、喜びに直結します。こんな時代だからリモート勤務も増えているけれど、場所が離れていたって、誰と働くかで成果は変わってくると思う。「いい人と働ける環境」は、組織の大きな福利厚生なんですよね。その福利厚生を実現していくのが、人事の醍醐味です。

僕は、採用や評価の一般的なセオリーをもっていない代わりに、人事領域以外でさまざまな経験をしてきました。

なので、課題を見つけたら「これは会社にとってどういう意味がある?」「事業にとってはどう?」と、その都度考える。経験のある人にヒアリングはするけれど、前例を思考停止で取り入れることはありません。いつも、会社やチームにとってベストな方法を探り、決めていきたいと考えています。

そして、いずれは「社員全員で採用する、社員全員で評価やマネジメントをする」という意識が醸成できたら理想的です。本当に一丸となっている組織は、会社をどんなふうに良くしていくべきか、一人ひとりが考えているものなんですよね。

もちろん、人事業務の全体を設計したり、細々としたオペレーションをするのは、僕の仕事。「人事と相談して進めていけば、いい人が採用できる」「いいチームがつくれる」という信頼に足る存在でありたいです。

■これからしたいこと、withコロナでするべきこと

これからしばらくは、コロナを機にさまざまな人事施策が変わっていくでしょう。特に、リモート勤務で生産性を高めるための仕組みづくりは、新たな課題です。

「生産性」とは、時間あたりに出すバリューの総量。それを増やすことも測ることも大切ですが、そもそも何がバリューなのか、成果なのかを定義しなおす必要があります。オフィスで見えていたバリューだけを数えるのは、業務によっては不公平になりそうです。

たとえば、人間は誰かの役に立てるとうれしいもの。でも、リモート勤務だとその「人の役に立つ実感」が得られにくい気がしています。オフィスなら「この人が困っているから助けてあげよう」と動けても、リモートでは困っているのがわからない。「人と人をつなげて関係をよくしてあげる」といったコミュニケーションの働きかけも、オンラインではなかなか難しい……。だけど、こういうふわっとしたバリューも、本当は拾い上げて評価するべきなのかもしれないわけです。

このあたりは本当に手探りだし、方針は会社によってさまざまでしょうね。どんな方針をとるにしても、僕は誰もが気持ちよく働けるような仕組みと環境を、なるべくスピーディーに構築していきたいです。

とはいえ、いまはコロナで様変わりした現状に適応して、生き延びるのが優先。そして、「然るべきタイミングできちんと攻める」ための体制づくりを、強く意識しています。長期的には、インナーブランディングや拡大フェーズへの仕込みがポイントになってくるでしょう。

すべてにおいて気をつけているのは、コロナに引っ張られすぎないことです。全部をコロナのせいにしない、と言い換えられるかもしれません。

なぜなら、イレギュラーな事態はいつだって起こり得ること。そういう非日常に対応できる組織とはなにか? それをどうやってつくっていくのか? という前提の問いを、今後も忘れないようにしたいと考えています。それは、働く環境やポジションが変わっても、揺るがない視点です。

■ベースはずっと「楽しいことしかやりたくない」

……と、僕にとっての「人事」について、これまでのスタイルや理想を語りました。いろいろ書いてきたけれど、まだたくさんのことを「やりたい」だけで、完全には「やれていない」のが現実です。だけど、そこまでやっていかなければ楽しくないだろうな、とも思っています。

結局、楽しいことしかやりたくないんですよね。同僚にも「きみは自分のやりたいことしかやってないよね」と言われました。でもそれは、面倒なことや苦しいことにも楽しみを見い出すし、自分が楽しいと思える環境を自分でどうにかつくっていく、ということ。

そういう意味で、これからも僕はきっと「楽しいことしかやらない」スタンスを、一生続けていくのだと思います。